お部屋探しで内見を経験したら、次に待っているのが「契約」です。
正確には、契約の前に「入居審査」という関門もあります。審査の流れと日数は、こちらにまとめています。
→ 賃貸の入居審査とは?流れ・日数・見られるポイントと通るコツ
じつは私、賃貸の契約をしたことがありません。だから、契約の場で何が起きるのかも、よく知りませんでした。分厚い書類に、むずかしい言葉。その場の空気にのまれて、よくわからないまま「はい」とハンコを押してしまいそうな自分が、簡単に想像できてしまって…。
あとから「そんなの聞いてない!」と泣くのは絶対にイヤ。退去のときに高額請求されるのもこわいし、変な特約に気づかずサインしてしまうのもこわい。
そこで、ハンコを押す前に知っておきたいことを徹底的に調べました。同じように「契約ってなんだかこわい」と感じている方の、下調べの代わりになればうれしいです。
契約書と「重要事項説明書」は別もの。何が違うの?
まず最初に混乱したのがここでした。契約のときに出てくる大事な書類は、大きく2つあります。
- 重要事項説明書(じゅうせつ)…契約の前に、物件のことと契約条件の大事なところを説明してもらう書類
- 契約書…実際の約束そのものを書いた書類。サインすると契約成立
重要事項説明は法律(宅建業法)で義務付けられていて、宅地建物取引士という国家資格を持った人しか説明できない決まりになっています。説明のときには資格証を提示することになっているそうです。
つまり流れは、「重要事項説明を聞く → 納得する → 契約書にサイン」。重要事項説明の段階では、まだ契約は成立していません。ここが「引き返せる最後のポイント」なんですね。これを知っただけで、私は少し気が楽になりました。
※説明できるのは国家資格を持った人だけ
⬆ ココも見る
⬆ ココも見る
⬆ 特にココ
⬆ 特にココ!納得してからサイン
※図はイメージです。実際の書式は物件や会社によって違います
「その場で全部読める気がしない」→ 事前にもらえます
私の正直な気持ちは、「その場で読んで、その場で理解できる気がしない」でした。でも調べてみたら、ちゃんと道がありました。
- 重要事項説明書は、事前に送ってもらえるようお願いできます。「先にいただいて読んでおきたいです」と伝えるのは変なことではなく、むしろ勧められている方法だそうです
- ビデオ通話で説明を受けられる「IT重説」というやり方も広がっていて、この場合は書類を先に送ってもらうのが前提の仕組みになっています
- 読んでもわからなかった言葉は、説明の場で遠慮なく質問していい。質問に答えるのが宅地建物取引士さんのお仕事です
「事前にもらって、マーカーを引きながら読んで、質問リストを作ってから臨む」。これなら私にもできそうだと思えました。
こわいこと① 退去のときの高額請求を防ぐ読み方
私が一番こわかったのがこれです。でも調べてみると、借りる側を守る考え方が、ちゃんと用意されていました。
国土交通省が出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、こんな考え方が示されています。
- 普通に暮らしてできた傷みや汚れ(通常損耗)と、年月がたって自然に劣化した分(経年変化)は、大家さん側の負担が原則
- 借りた人が負担するのは、うっかりや不注意でつけてしまった傷・汚れなど
「原状回復」といっても、借りたときの状態に完全に戻すという意味ではないんですね。2020年の民法改正で、この考え方は法律の条文にも明記されたそうです。敷金についても、「基本は戻ってくるお金」という位置づけが民法に書かれています。
そのうえで、契約前に見ておきたいのはこの2つ。
- 契約書・重要事項説明書の「敷金の精算」「原状回復」の欄に、何と書いてあるか
- 特約で、借りる側の負担が増やされていないか(次の章でくわしく)
そして、入居の日にできる自衛策が「写真」だそうです。もともとあった傷や汚れを、全体とアップの両方で、日付がわかる形で撮っておく。入居時に渡される「現況確認書(入居時チェックシート)」も、面倒がらずにきちんと記入して提出する。退去のときの「言った言わない」を防ぐ、一番の味方になってくれます。
こわいこと② 見落としやすい「特約」に気づく
契約書の後ろの方にひっそりある「特約事項」。調べるほど、ここが一番気を付けたい場所だとわかりました。
特約は「この契約だけの特別ルール」。原則よりも借りる側の負担が重くなる話は、たいていここに書かれます。よく見かける特約には、こんなものがあるそうです。
- 退去時のハウスクリーニング代は借主負担、という特約
- 短期解約の違約金(一定期間より早く解約すると家賃の1ヶ月分など。期間も金額も物件によって違います)
- 鍵交換費用の負担
- 更新のときの更新料
ちなみに、ハウスクリーニング代の目安は間取りによって変わり、ワンルーム〜1Kで2〜4万円前後、ファミリータイプだと5万円を超えることもある、と紹介されています(地域や業者によって違うので、あくまで「契約書の金額がかけ離れていないか」を見る参考に)。
「何を負担するのか」の中身も確認ポイント。一般的なクリーニングは、キッチン・浴室・トイレ・洗面・床・窓などのお部屋全体の専門清掃を指すことが多く、エアコン内部の洗浄や換気扇の分解洗浄は別料金(オプション)扱いになっていることもあるそうです。「クリーニング一式」とだけ書いてある場合は、「どこまで含まれますか?」と聞いておくと安心です。
ここで大事なのは、特約=悪、ではないということ。たとえばクリーニング特約は、負担する範囲や金額がはっきり書かれていて、金額も妥当なら有効とされることが多いそうです。逆に、あいまいな書き方で大きな負担をさせる特約は、無効と判断された事例もあるとのこと(個別のケースは専門家への確認が安心です)。
チェックのしかたは、思ったよりシンプルでした。
- 金額がはっきり書いてあるか(「実費」とだけ書いてあると、あとでいくらになるかわかりません)
- 何を負担するのか、具体的に書いてあるか
- 読んで、自分が納得できるか
納得できなければ、サインの前なら「この特約はどういう意味ですか?」「これは外せますか?」と聞いていいそうです。ハンコを押す前だけが、確認や交渉ができるタイミング。ここは覚えておきたいところです。
こんな文言があったら、いったん立ち止まる
調べる中で、「この書き方は要注意」と紹介されていた文言もまとめておきます。
- 「敷金は理由のいかんを問わず返還しない」…敷金は基本、戻ってくるお金。高額すぎる差し引きの特約は無効と判断された最高裁の判例もあるそうです
- 「原状回復費用は全額借主負担とする」…普通に暮らしてできた傷みまで負担させる書き方は、国土交通省ガイドラインの原則から外れています
- 「クリーニング代は実費」「修繕費用は別途請求」…金額が書かれていない=いくらになるかわからないままサインすることに
- 「退去時は畳・クロスを全面張替え、費用は借主負担」…一律で全額負担にする書き方は、部分負担の原則から外れがち
こうした文言があったら即アウト、と言い切れるわけではありません(有効かどうかは内容次第で、個別の判断は専門家の領域です)。でも少なくとも、「そのままサインしないで」のサインではあります。「これはどういう意味ですか?」と質問して、納得できる説明がなければ持ち帰りましょう。
こわいこと③ 「聞いてた話と違う」を防ぐ
3つ目のこわさは、あとから「聞いてた話と違う」となること。これを防ぐコツも調べました。
- 口約束は形に残りません。「退去のときの費用はかかりませんよ」のような大事な話は、書面に書いてもらうか、せめてメールで残しておく
- エアコンなどが「設備」か「残置物」かで、壊れたときに直してもらえるかどうかが変わります。重要事項説明書の設備の欄で確認を(内見のときの見方は賃貸の内見でチェックする設備にまとめています)
- 退去の連絡はいつまでに必要か(解約予告)。1ヶ月前か2ヶ月前かは物件によって違うので、必ず確認。うっかりすると、住んでいない月の家賃を払うことになりかねません
- 火災保険は「勧められた保険に入るしかない」と思い込みがちですが、自分で選んで加入できる場合が多いそうです。ただし契約の条件として補償内容(借家人賠償責任など)が決められていることがあるので、「自分で選んだ保険でもいいですか?」と確認を。火災保険の中身(3つの補償)と選び方は別の記事に詳しくまとめました。保証会社の費用も「いくらで・何のためのお金か」をチェック
その保証会社について、「何のための会社か・初回保証料の目安・審査で見られるところ」は、こちらの記事でくわしくまとめています。
→ 賃貸の保証会社とは?保証料の相場と審査・滞納時のしくみ
退去の日のことも、契約前に見ておく(立会いとサインの話)
調べていて「これは知っておいてよかった…」と思ったのが、退去のときの立会いの話です。契約の話なのに退去の話?と思うかもしれませんが、退去の条件を決めているのは、これからサインする契約書。だから契約前が、確認のチャンスなんです。
- 退去時の立会いは、法律上の義務ではないとされています(ただし契約書に立会いについての定めがある場合は別。ここも契約前に見ておくポイントです)
- 立会いの場で、修繕費用の書かれた確認書にその場でサインを求められて、あとから取り消せず困った——というトラブルの話も見かけました
- だから、立会いに出る場合も、金額の書かれた書類にその場でサインする必要はないそうです。「明細を後日、書面でください」と伝えて持ち帰ればOK
- 立会いをしない場合は、鍵の返し方(郵送など)と精算の流れを管理会社と決めておくやり方もあるそうです。このときこそ、入居日に撮った写真が自分を守ってくれます
- 高圧的な請求をされたら、一人で抱えず消費者ホットライン「188」へ
契約前の今できることは、「退去時の立会いはありますか?」「鍵の返却と精算はどういう流れですか?」と聞いておくこと。先に流れを知っているだけで、退去の日に慌てずにすみます。
退去のお金のこと(敷金がどこまで返ってくるか・原状回復の負担ルール・立会い当日の注意点)は、こちらの記事で詳しくまとめました。
▶ 賃貸の退去費用はどこまで負担?敷金・原状回復のルールと立会いの注意点
契約前チェックリスト(ハンコの前に指さし確認)
ここまで調べたことを、チェックリストにまとめました。
- 重要事項説明書を事前に送ってもらった?
- わからない言葉の質問リストを作った?
- 敷金・原状回復の欄を読んだ?
- 特約事項に、金額と内容がはっきり書いてある?
- 短期解約の違約金はある?期間と金額は?
- エアコンなどは「設備」?「残置物」?
- 退去の連絡は何ヶ月前まで?
- 更新料・火災保険・保証会社の費用を確認した?
- 火災保険は自分で選べるか確認した?
- 退去時の立会いの有無・鍵の返し方・精算の流れを聞いた?
- 口頭で聞いた大事な話は、書面かメールに残した?
- 入居日に部屋の写真を撮る準備はできてる?
迷ったら、その場で決めなくていい
調べていて一番ほっとしたのは、「持ち帰って検討します」と言っていい、ということでした。急かされても、納得できないままハンコを押す必要はないんですね。
それでも困ったときの相談先も、ちゃんとあります。
- 消費者ホットライン「188(いやや)」…お住まいの地域の消費生活センターにつながります。契約や退去時のトラブル相談ができます
- 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」…インターネットで誰でも無料で読めます
まとめ|契約は「こわいもの」ではなく「確認できるもの」だった
調べる前の私にとって、契約は「よくわからないまま進んでいく、こわいもの」でした。でも今は、こう思っています。
- 重要事項説明は、借りる側を守るための仕組み。事前にもらって読める
- 退去時の負担には、国のガイドラインというものさしがある
- 特約は「金額・内容・納得」の3点チェック。気になる文言は質問してから
- 退去の日は、金額の書かれた書類にその場でサインしなくていい
- 迷ったら持ち帰る。困ったら188
知らないままだと不安なことも、一つずつ確認すれば大丈夫。同じように初めての契約にドキドキしている方の、お守り代わりになればうれしいです。
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