賃貸の物件情報を眺めていると、「敷金1・礼金1」「初期費用は家賃の5か月分くらい」なんて言葉がよく出てきます。
正直に告白すると、私は昔はじめて賃貸を借りたとき、初期費用をいくら払ったのかまったく覚えていません。たぶん、不動産屋さんに言われるがまま払っていたんだと思います。当時は「そういうものなんだ」と疑いもしませんでした。
でも今、娘とのお部屋探しであらためて見積もりの項目を見てみると、「敷金」「礼金」はまだしも、「室内消毒施工料」「24時間安心サポート」「鍵交換代」……これ、全部払わないといけないの?と疑問だらけ。
しかも以前、「消毒代って名目だけで、実際はほとんど消毒なんてしていないらしいよ」という話を聞いたことがあって、それが本当なのかもずっと気になっていました。
そこで今回は、賃貸の初期費用の内訳を1つずつ調べて、「必ずかかるもの」「実は外せるかもしれないもの」「交渉できるといわれているもの」に整理しました。私と同じように「言われるがまま払ってきた」方は、ぜひ一緒に確認してみてください。
賃貸の初期費用は「家賃の4.5〜5か月分」といわれる
不動産サイトの解説を見比べると、賃貸の初期費用の目安はおおよそ家賃の4.5〜5か月分といわれています。敷金・礼金がない物件なら3〜4か月分ほど、逆に敷金・礼金がしっかりある物件だと5〜6か月分になることもあるそうです。
「そんなにかかるの!?」と思いますよね。私も思いました。内訳をざっくり図にすると、こんなイメージです。
※あくまで一般的な目安です。物件・地域・時期によって大きく変わるので、必ず見積もりで確認してください。
大事なのは、この中に「性質のちがうお金」が混ざっていること。「預けるお金(敷金)」「お礼として渡すお金(礼金)」「サービスの対価(仲介手数料など)」「任意のオプション(消毒など)」が全部同じ見積書に並んでいるんです。だから、1つずつ「これは何のお金?」と分解していくのが、損しないための第一歩になります。
見積書の項目を1つずつ見ていく
敷金|「預けるお金」なので戻ってくる可能性がある
敷金は、家賃の滞納や退去時の原状回復費用にあてるために大家さんに預けておくお金です。目安は家賃1か月分ほどといわれます。あくまで「預け金」なので、退去時に差し引くものがなければ戻ってきます。私も昔、大家さん直接のアパートで敷金を全額返してもらえた経験があります。
敷金がどこまで戻ってくるか(原状回復のルール)は、別の記事でくわしくまとめました。→ 賃貸の退去費用はどこまで負担?敷金・原状回復のルールと立会いの注意点
礼金|戻ってこない「お礼」のお金
礼金は、大家さんに「貸してくれてありがとう」の意味で渡すお金で、敷金とちがって戻ってきません。昔の慣習の名残りだそうで、最近は「礼金ゼロ」の物件も増えています。目安は0〜1か月分(物件によっては2か月分)。戻ってこないお金なので、初期費用を抑えたいときに真っ先に見直したい項目です。
前家賃・日割り家賃|家賃の「前払い」
賃貸の家賃は前払いが基本なので、契約時に翌月分の家賃(前家賃)を先に払います。さらに、月の途中から入居する場合は、その月の残り日数分を日割りで計算した日割り家賃もかかります。これは住む以上必ず必要なお金なので、外すことはできません。ただし「家賃発生日(入居日)をいつにするか」で金額が変わるので、契約前に確認する価値はあります。
仲介手数料|実は法律のルールがある(後でくわしく)
物件を紹介してくれた不動産会社に払う手数料です。「家賃1か月分+消費税」が多いのですが、実は法律上の原則は半月分というルールがあります。ここは大事なので、後ほど1章まるごと使って説明します。
火災保険料|「不動産屋さん指定」とは限らない
賃貸契約では火災保険への加入が条件になっていることがほとんどです。見積もりに最初からセットで入っていることが多いのですが、契約によっては自分で保険を選べる場合があります。補償内容と保険料を自分で選べば、初期費用の節約にもつながります。→ 賃貸の火災保険は自分で選べる?最低限必要な3つの補償と選び方
保証会社利用料|連帯保証人の代わり
家賃を滞納したときに立て替えてくれる「家賃保証会社」を使うための費用で、目安は家賃の0.5〜1か月分といわれます。最近は連帯保証人がいても保証会社の利用が必須という物件が多く、ここは外せないことがほとんどのようです。どの保証会社を使うかは物件側で決まっていることが多いので、金額と更新料(年ごとにかかる場合あり)を見積もりで確認しておきましょう。
保証会社のしくみや保証料の相場、審査で見られるポイントは、こちらの記事でくわしくまとめています。
→ 賃貸の保証会社とは?保証料の相場と審査・滞納時のしくみ
鍵交換代|ガイドライン上は「大家さん負担が妥当」とされている
前の入居者が使っていた鍵を新しいものに交換する費用です。実は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、鍵の交換費用は物件管理上の問題なので貸主(大家さん)負担が妥当という考え方が示されています。ただしガイドラインに強制力はなく、実際には借主負担になっている物件が多いのが現実だそうです。
ここで1つ注意。費用を負担したくないからといって鍵交換そのものをやめるのは防犯上おすすめできません。前の入居者や合鍵を持つ誰かが入れてしまう可能性が残るからです。母子で暮らす身としては、ここは「誰が払うか」は確認しつつ、交換自体はしてもらいたい項目だと感じました。
仲介手数料は「原則、家賃の半月分」という法律ルールがある
調べていて一番驚いたのがこれです。宅地建物取引業法にもとづくルールでは、賃貸の仲介で不動産会社が借主から受け取れる報酬は、原則として「家賃の半月分+消費税」まで。家賃1か月分を受け取るには、依頼者(借主)の承諾が必要と決められています。
実際に、「承諾していないのに1か月分を払った」として借主が返還を求めた裁判があり、2020年に東京高裁で「事前の承諾なく1か月分を受け取ることは認められない」という判断が確定しています。
「じゃあ半月分しか払わなくていいんだ!」と言いたくなりますが、ここは少し冷静に。この判決のあと、多くの不動産会社は申込みの段階で「仲介手数料1か月分に承諾します」という書面やチェック欄を用意するようになったそうです。つまり、契約の流れの中で承諾したことになっているケースが大半なんですね。
それでも、このルールを知っているだけで見積もりの見え方が変わります。もし交渉するなら、けんか腰ではなく「仲介手数料はご相談できますか?」と申込み前にやわらかく聞くのがよいとされています。不動産会社も商売なので、無理な値切りより「気持ちよく契約したい」という姿勢のほうが結果的にうまくいくようです。
「消毒代」は本当に消毒しているの?→ 調べたら驚きの実態でした
さて、私がずっと気になっていた「消毒代」の話です。「名目だけで、実際はほとんど消毒していないらしい」という噂、調べてみるとあながち嘘ではなさそうでした。
不動産会社の解説記事を読み比べると、「室内消毒施工料」「除菌・消臭代」などの名目で数万円弱を請求されるケースがある一方で、その中身は市販の燻煙剤(バルサンのようなもの)や除菌スプレーを撒くだけで、作業時間は10分ほどということもあるそうです。中には「実際には何も行われていなかった」という話まで紹介されていました。
さらに、東京の主要エリアの賃貸物件 約1万6千件を分析した不動産会社の独自調査では、消毒費用を請求していた物件は全体の約5%だけだったそうです。つまり、95%の物件では請求されていないお金ということ。「全員が当たり前に払うもの」ではないんですね。
国土交通省のガイドラインでも、消毒は日常の清掃と異なり借主の管理の範囲を超えているため、貸主負担とすることが妥当という考え方が示されています(こちらも強制力はありません)。
消毒代は断れる?
多くの解説で共通していたのは、消毒は基本的に「任意のオプション」であることが多いということ。つまり、こう確認すればいいそうです。
「この消毒施工は任意ですか?それとも入居の条件ですか?」
任意なら「今回は外してください」と伝えれば外せる可能性が高く、入居条件になっている場合は外せません(その場合、その費用込みでこの物件を選ぶかどうか、という判断になります)。気になる場合は「消毒は自分でしますので」と伝える断り方も紹介されていました。実際、市販の燻煙剤なら数千円かからずに自分でできてしまいます。
大事なのはタイミングで、申込みの前に伝えるのがベストだそうです。申込み後や契約直前だと「内容に納得したうえで申し込んだ」とみなされて、変更しにくくなるからです。
見積書のどこを見る?「外せるかもしれない項目」の見分け方
ここまでの内容を、見積書の見本にまとめてみました。色分けがポイントです。
赤:まず「任意ですか?」と聞いていい項目
室内消毒・除菌消臭・害虫駆除・消火器代などのオプション系は、前の章のとおり任意のことが多い項目です。「24時間安心サポート」(鍵や水まわりの緊急駆けつけサービス)も同じで、任意なら外せる可能性があります。断り方として納得感があると紹介されていたのは、「自分で入る火災保険に駆けつけサービスが付いているので不要です」という伝え方。実際、火災保険には水まわりや鍵のトラブル駆けつけが特約で付けられるものがあります。
黄:ルールを知ったうえで「ご相談」する項目
礼金は戻ってこないお金なので、交渉対象としてよく挙げられます。空室が長い物件や引っ越しの閑散期(一般に夏場など)は応じてもらいやすいといわれます。仲介手数料は半月分ルール、鍵交換代はガイドラインの考え方、火災保険は自分で選べるかの確認。それぞれ前の章のとおりです。
また、値下げではなく「フリーレント」(入居後の家賃を一定期間無料にしてもらう方法)をお願いする手もあるそうです。大家さんにとっても家賃相場を下げずに済むので、値引きより通りやすいことがあるのだとか。
交渉するときの3つの心得
調べた内容をまとめると、コツは3つでした。
- 申込み前に伝える(申込み後・契約直前はトラブルのもと)
- けんか腰にしない(「外せますか?」「ご相談できますか?」と確認の形で)
- 繁忙期(春先)は通りにくいと心得る(他に借りたい人がいれば、そちらが優先されるだけ)
「交渉」というと身構えてしまいますが、実際は「この項目は任意ですか?」と質問するだけでいいんですね。質問して外せたら得、外せなくても納得して払える。どちらでも損はありません。私はこれまで「そんなこと聞いていいの?」と思っていたので、これを知れただけでも調べた甲斐がありました。
「敷金・礼金ゼロ」物件は初期費用が安い。でも注意点も
初期費用を抑えたいなら「敷金・礼金ゼロ」の物件も候補になります。ただし、いくつか注意点があるといわれています。
- 退去時にまとまった請求が来やすい(敷金を預けていないので、クリーニング代などを退去時に実費で払う)
- 短期解約違約金(1〜2年以内の解約で違約金、という特約が付いていることがある)
- クリーニング代が契約に組み込まれていることがある
つまり「タダになった」のではなく「払うタイミングが後ろにずれただけ」のこともある、ということ。契約書の特約は必ず確認しましょう。契約書のどこを見ればいいかは、こちらにまとめています。→ 賃貸の契約書・重要事項説明書の読み方|ハンコを押す前に見る場所
また、初期費用そのものを軽くするという意味では、礼金・仲介手数料・保証料がかからないUR賃貸という選択肢もあります。
→ UR賃貸とは?メリット・デメリットと収入基準・割引制度も
まとめ|見積もりは「聞いていいもの」でした
今回調べてわかったことをまとめます。
- 初期費用の目安は家賃の4.5〜5か月分といわれる(物件により大きく変わる)
- 敷金は「預け金」、礼金は「戻らないお礼」。性質がぜんぜん違う
- 仲介手数料は法律上の原則は半月分。1か月分には借主の承諾が必要
- 消毒代などのオプションは任意のことが多く、「任意ですか?」と聞いていい
- 交渉やお願いは申込み前・やわらかく・繁忙期は避ける
- 敷金・礼金ゼロは「後払いになっただけ」のことも。特約を確認
昔の私のように「言われるがまま払う」のと、「意味がわかったうえで払う」のとでは、同じ金額でも安心感がまったく違います。何より、任意のものを知らずに払ってしまうのはもったいない。見積もりをもらったら、この記事の色分けを思い出して、1つずつ確認してみてくださいね。
※この記事は各種の公的情報・不動産会社の解説をもとにまとめた一般的な内容です。契約条件は物件ごとに異なるので、最終的には見積書・契約書と不動産会社への確認をお願いします。
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